この軸が見ていること
「問いかけ」が高く出るのは、相手が直前に話した中身を、もっと話してもらうための質問です。反対に、どんな相手にも使える決まった質問や、話の流れを急に切り替える質問は低く出ます。
見分け方は、「その質問は、相手の直前の発言がなくても聞けたか」です。聞けたなら、それは相手の話から出てきた質問ではありません。
また、そのターンに問いかけがまったく無ければ、この軸は0点です。含みを持たせた言い方や、続きを促すような語尾だけでは、問いかけとは数えません。
元になった考え方
Huangさんらの研究(2017年)は、初対面の会話やスピードデートを調べ、質問を多くする人ほど会話相手から好かれることを報告しました。とくに効いていたのは、相手が直前に話した内容をもっと話すよう促す「フォローアップの質問」でした。質問によって、相手は「自分の話を聞いてもらえている」と感じやすくなる、という説明がされています。また同じ研究では、人は質問のこうした効果を事前には予想していない、とも報告されています。
もう一つは、戸江哲理さんの「糸口質問連鎖」の研究(2008年)です。会話の中には、それまでの話と断絶した質問が差し出されることがあります。回答者がその断絶に気づくと、「この人はこの話題について何か話したいことがあるのかもしれない」と感じ取れる。そうして、答えのあとに質問した側が自分の話をする場所が確保される、という手続きが記述されています。唐突な質問は、いつも失敗というわけではなく、相手が話す場所を作りにきている合図のこともある、ということです。
会話例:同じ発言への5つの返し
- いいですね、癒やされそう。0点問いかけがないので、この軸は0点です(受容や場づくりの点は別に入ります)。
- 趣味って何かあります?低いどんな相手にも、どの場面でも使える質問です。相手が話した犬の話から、話題を切り替えてしまっています。
- 実家の犬?低め(0ではない)疑問の形にはなっていますが、相手の言葉をそのまま繰り返しただけです。0点にはなりませんが、低い評価のままです。
- 久しぶりだと、ちゃんと覚えててくれました?高い「久しぶり」という相手の言葉を足場に、相手がいちばん話したそうな場面(再会の瞬間)を聞いています。相手が続きを話したくなる質問です。
- 犬種は何ですか? 何歳ですか? 名前は? 実家ってどちらでしたっけ?半分になる1ターンに問いかけを3つ以上詰め込むと、算出した点が半分になります。一つずつは悪くない質問でも、並べると相手はどれに答えればいいか迷います。
疑問符がなくても問いかけになる場合
「それ、ちゃんと覚えてたの」「マジで」のように、文字の上では疑問符がなくても、文脈から明らかに相手へ問いを投げている場合は、問いかけとして採点します。採点カセット「デフォルト採点Ⅱ」「Ⅲ」では、「〜ですかね」のような推量の形の問いかけも含めます。一方で「写真見せてほしいな」のような要望・お願いは、それだけでは問いかけに数えません。
気持ちを吐き出した直後は、質問より先に受け止めを
相手がつらさや不安を打ち明けた直後に、受け止めの言葉なしで質問を重ねると、深掘りの形をしていてもこの軸の点は伸びにくくなります。相手が求めているのが質問ではなく受け止めである場面だからです。
唐突な質問への返し方(デフォルト採点Ⅱ・Ⅲ)
会話の途中で、相手から流れと関係のない質問が来ることがあります。
- たまにします。炒め物くらいですけど。答えるだけ質問にはきちんと答えています。ただ、相手が話したいことがあってこの質問を差し出したのだとすると、相手が話す番は回ってこないまま会話が止まります。
- たまにします。炒め物くらいですけど。○○さんは作るんですか?答えて、問いを返す一言答えたうえで、同じ問いを相手に返しています。相手が話す場所を、こちらから空けています。聞き返しの中身は凝らなくても大丈夫です。
「デフォルト採点Ⅱ」「デフォルト採点Ⅲ」では、相手の質問がそれまでの話から明らかに断絶しているときに、一言でも答えたうえで相手に問いを返したターンを、問いかけの最上位の扱いにしています。戸江さんの研究の見立てに沿って、会話の技術を発揮しているのは質問を返した側だと考えたためです。断絶しているかどうか判断しにくい場合は通常どおりの採点になるだけで、プレイヤーが損をすることはありません。
ゲームでの扱い
問いかけは0〜60点です。受容のような明示的な帯分けはありません。まとめると次のとおりです。
- 相手の発言の固有の中身を深掘る質問は高く、唐突な話題転換や内容に依存しない定型の質問は低く評価します。
- 問いかけがまったく無いターンは0点です。
- 相手の言葉をただ繰り返すだけの聞き返しは低い評価ですが、0点ではありません。
- 1ターンに問いかけが3つ以上あると、算出した点を半分にします。
最後の「詰め込みすぎ」の扱いは、研究から取ったものではありません。Huangさんらが調べたのは会話全体を通した質問の量で、1回の発言に含まれる質問の数ではないからです。そのまま持ち込むと、1回の発言に質問を並べるほど高得点になってしまうため、的を絞る練習になるように設けた設計上の判断です。研究と矛盾するものではありませんが、研究の裏付けがあるわけでもありません。
よくある疑問
- 質問は多いほうがいいんですか?
- 会話全体で見れば、質問が多い人のほうが好かれたという研究はあります。ただ、1回の発言では的を絞ったほうが点が出ます。一つ置いて、相手の答えを待つほうが、この軸には合っています。
- 興味がないのに質問するのは失礼ではないですか?
- そう感じる人は少なくありません。ただ、唐突な質問を受けたときの聞き返しは、興味の演技というより、相手に話す番を返す動きだと考えることもできます。
自分がした質問を一つ取り出して、「相手の直前の発言がなくても、この質問はできたか」を確かめてください。できたなら定型の質問です。あわせて、問いかけが0点のターンが続いている場所を見ると、相手が何か言いかけていたのに拾えなかった場所が見つかることがあります。
この解説の前提
点数は会話能力の測定値ではなく、このゲームの採点基準にどれだけ合っていたかの目安です。採点しているのは会話に参加していないAIで、会話の記録を外から読んで点をつけています。相手が実際にどう感じたかは測っていないので、低く出ても人柄や能力の話ではありません。
参照している研究はどれも人間同士の会話を対象にしたもので、AI相手に同じことが成り立つかは確かめられていません。また、研究が「この返し方が優れている」と述べているわけではなく、それを点数にしたのは開発者の判断です。詳しくは採点の考え方(設計根拠と参照研究)にまとめています。
参照した研究
- 戸江哲理(2008)「糸口質問連鎖」『社会言語科学』10(2), 135-145. doi:10.19024/jajls.10.2_135
- Huang, K., Yeomans, M., Brooks, A. W., Minson, J., & Gino, F. (2017). It doesn't hurt to ask: Question-asking increases liking. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 430-452. doi:10.1037/pspi0000097
- Yeomans, M., Brooks, A. W., Huang, K., Minson, J., & Gino, F. (2019). It helps to ask: The cumulative benefits of asking follow-up questions. Journal of Personality and Social Psychology, 117(6), 1139-1144.
研究の著者および学会は、このゲームの開発・監修に関わっていません。研究者による推薦や承認を示すものではありません。