この軸が見ていること
「開き」は、自分のことを話したかどうかと、その出し方を見る軸です。二つの観点があります。
- テンポ:短く開いて、相手に返しているか。長く自分の話を続ける形は低く評価します。
- 深さ(デフォルト採点Ⅱ・Ⅲのみ):開いた内容の深さが、いまの相手との関係の段階に合っているか。
自分のことを話したあとで「言わなければよかった」と思う経験は多くの人にあります。そのとき問題だったのは、話した中身ではなく、深さの段や出す長さだった、という場合があります。
元になった考え方
Sprecherさんらの実験(2013年)では、初対面の二人を「交互に質問し合って答え合う」組と「片方が話し、もう片方が聞き役に回る」組に分けました。交互に開示し合った組のほうが、好意、親密さ、似ていると感じる度合い、会話の楽しさのいずれも高くなりました。また、長いターンでまとめて話すより、すぐに交代しながら開示し合うほうが好意が高いことも報告されています。「短く開いて相手に返す」を高く評価するのは、この知見に沿ったものです。自己開示と返報性の関係については、相川充さんらの日本の実験研究(1983年)もあります。
深さの観点は、丹羽空さん・丸野俊一さんが作った自己開示の深さの尺度(2010年)を使っています。深さは4つのレベルに整理されています。
| レベル | 内容の例 |
|---|---|
| Ⅰ | 趣味・好きなもの・日常の出来事 |
| Ⅱ | 過去に苦労した経験 |
| Ⅲ | 決定的ではない欠点や弱点(直せる範囲の短所、小さな失敗) |
| Ⅳ | 自分の否定的な性格や能力(本人が根本的な欠点だと思っているもの) |
同じ研究では、同性の初対面の相手にはレベルⅠ・Ⅱの開示が中心で、Ⅲ・Ⅳは出にくいこと、ある程度親しい友人には深さによらず開示の量が増えることが報告されています。
会話例:同じ発言への4つの返し(相手とは初対面)
- 頑張ってますね。開きは伸びない自分のことを何も出していないので、この軸の点は伸びません。相手からすると、こちらがどういう人なのかが見えないままです。
- 私も前に少しだけ走ってて、最初の一週間がいちばんきつかったです。どのくらい走ってるんですか?高いレベルⅡ(過去に苦労した経験)を一文で出し、すぐに相手に番を返しています。初対面の相手に合った深さと長さです。
- 私も走ってたんですよ。最初は近所を1キロくらいで、それから大会にも出るようになって、フルマラソンも2回走って、そのときはタイムが……(以下、自分の話が続く)低い中身は相手の話題につながっていますが、長く自分の話を続けています。テンポの観点で低く評価され、量によっては「自分語り」の減点の対象にもなります。
- 昔から何をやっても続かない性格で、たぶん根本的にだめなんですよね。加点に入らない(減点はしない)レベルⅣの開示です。デフォルト採点Ⅱ・Ⅲでは、初対面の段階ではレベルⅠ・Ⅱまでが加点の対象なので、この開示は加点に数えません。ただし減点もしません。
最後の例の中身(続かない、という話)は、深さを変えれば同じ場面でも出せます。たとえば「私も続かないタイプで、ランニングシューズだけ二足あります」なら、小さな失敗としての開示になり、関係が少し進んだ段階では加点の対象になります。黙るか話すかの二択ではなく、同じ話を一段浅いところから出す、という選択肢があります。
ゲームでの扱い
開きは0〜50点です。受容のような明示的な帯分けはありません。
「デフォルト採点」ではテンポだけを見ます。「デフォルト採点Ⅱ」「Ⅲ」では、それに加えて深さと関係段階の対応を見ます。相手との関係の段階は、会話中の画面に表示されています。
| 相手との関係の段階 | 開きの加点対象になる深さ |
|---|---|
| 初対面・顔見知り | レベルⅠ・Ⅱ |
| 友達の手前の段階・友達 | レベルⅠ〜Ⅲ |
| その先の段階・親友 | レベルⅠ〜Ⅳ |
加点の対象は段階が進むにつれて広がるだけで、狭まることはありません。関係が進んだせいで開きの点が下がる、ということは起きません。範囲の外の深さの開示は加点に数えませんが、減点もしません。深すぎる話をしたターンで起きているのは「マイナスがついた」ことではなく「プラスがつかなかった」ことです。
「デフォルト採点Ⅲ」は同じ基準を専用の判定エンジンで採点する方式で、1つのターンの中で最も深い開示が範囲の外にあると、そのターンの開きは0点として扱います(同じターンに範囲内の浅い開示があっても0になります)。この場合も、マイナスの点はつきません。
また、受容が低いターンでは開きの点が弱く反映されます(受容ゲート)。相手の話を受け止めないまま自分のことを開いても、関係は進みにくいという考え方です。
なお、会話がうまく続いてコンボが一定数たまると「解放フェーズ」に入ります。この間だけは、自分の本音や体験を話すことが加点になります。普段は短く出すのが基本で、深く話せる時間はゲームの側で用意している、という作りです。
よくある疑問
- 深い話をしたら減点されますか?
- されません。関係の段階に合わない深さの開示は加点に数えないだけで、減点はしませんし、ほかの軸の点にも影響させません。
- どの段階で、どこまで話すのが正しいのですか?
- 研究が「この段階ではこの深さが正しい」と言っているわけではありません。丹羽さん・丸野さんの研究は、深さと関係の対応を記述したもので、その対応を外したときにどうなるかは調べていません。段階ごとの割り当ては、このゲームの設計上の判断です。
自分が何を話したかではなく、その直前に相手が出していた話の深さを見てください。相手が趣味の話をしているところに、根本的な欠点の話を返していたら、段が大きく離れています。もう一つは、自分の話のあとに相手へ番を返したかどうかです。
この解説の前提
点数は会話能力の測定値ではなく、このゲームの採点基準にどれだけ合っていたかの目安です。採点しているのは会話に参加していないAIで、会話の記録を外から読んで点をつけています。相手が実際にどう感じたかは測っていないので、低く出ても人柄や能力の話ではありません。
参照している研究はどれも人間同士の会話を対象にしたもので、AI相手に同じことが成り立つかは確かめられていません。また、研究が「この返し方が優れている」と述べているわけではなく、それを点数にしたのは開発者の判断です。詳しくは採点の考え方(設計根拠と参照研究)にまとめています。
参照した研究
- 丹羽空・丸野俊一(2010)「自己開示の深さを測定する尺度の開発」『パーソナリティ研究』18(3), 196-209. doi:10.2132/personality.18.196
- Sprecher, S., Treger, S., Wondra, J. D., Hilaire, N., & Wallpe, K. (2013). Taking turns: Reciprocal self-disclosure promotes liking in initial interactions. Journal of Experimental Social Psychology, 49(5), 860-866. doi:10.1016/j.jesp.2013.03.017
- 相川充・大城トモ子・横川和章(1983)「魅力と返報性に及ぼす自己開示の効果」『心理学研究』54(3).
研究の著者および学会は、このゲームの開発・監修に関わっていません。研究者による推薦や承認を示すものではありません。